前回は、補助金申請の要点について述べた。
そもそも補助金は、原則として返済を求められない資金なので、リスクを伴う新規事業の立ち上げや高額設備の導入などの場面では、有効に活用したいものである。例えば、今春公募された「ものづくり補助金(一般型)」では、機械装置費など対象経費の2/3(上限1,000万円)が補助されるので、メリットはかなり大きい。
■補助金申請は自社の経営について考える絶好のチャンス
このように、補助金には大きなメリットがあるにも関わらず、申請をためらう経営者も多く見られる。補助金申請の相談を受ける中でよく聞かれるのが、「何を書けばいいのかわからない」「書いたことがないからできない」という理由である。たしかに、補助金を獲得するには、補助金を活用する事業の目的・必要性・実現性を的確に説明・訴求することが求められ、その準備には相応の時間と手間も必要になる。
しかしながら、補助金申請は、自社の経営について改めて考える絶好のチャンスなのである。なぜならば、申請書に記述すべき内容には、「何がしたいのか?」、「将来何を目指したいのか?」、「現状はどうなのか?」、「どんな課題に取り組まなければならないのか?」という、企業経営にとっての重要事項が多く含まれるからである。実は、補助金申請書を作成することを通じて、自社の経営計画をまとめているという面がある。過去に補助金申請に挑戦し、残念ながら採択に至らなかった企業の経営者もそのことに気づき、申請書作成に取り組んだことで「自社の将来について考える良いきっかけになった」と語っている。
■「生き残り」に向けた経営計画の作成
少子高齢化が進行し、人口減少現象が顕在化している経営環境の中で、地域の中小企業にとっての最大の経営課題は「どうやって生き残るか?」である。生き残りのためには、経営体質を強化しなければならないが、それには適正なプロセスと相応の時間が必要になる。体質強化に向けた課題に中長期的に取り組むプロセス、つまり経営計画の作成は、企業が生き残るための必要条件と言えよう。
補助金という実利も確保しながら、将来を見据えた経営計画の作成に挑戦することには、大きな意義がある。