この1ヵ月あまりの間に、2件の“残念”な経営改善計画書に遭遇している。これまでに10数件の経営改善案件に関わった私の目から見て、その中身が“残念”なのである。2件とも「認定支援機関」が関わり「経営改善計画策定支援事業」(いわゆる「405事業」)を活用しているものである。1件はすでに金融機関から同意されていたもの、もう1件は一旦金融機関に提出したが差戻しされたものである。
差戻しされた方の計画書は現在再作成中で、次回は何とかなると思われるが、問題なのは、計画が既に同意されて現在実施段階にある方だ。計画が同意されたのは良いのだが、目標設定された財務数値の達成に向けたプロセスである事業展開が不明確で、計画の実行性に疑問を抱いた。さまざまな事情の中でその計画書は作成されたのであろうが、財務計画の裏付けとなる事業戦略、事業計画が入念に練り上げられていないのは、今さらではあるが“残念”であった。
経営改善計画は、通常金融機関から何らかの金融支援を受けることが前提であり、そのため、資金状況の改善に向けて収益(キャッシュフロー)をいかに確保できるかが根幹になる。そのせいか、認定支援機関によって作成される経営改善計画書が、財務数値計画に過度に傾斜している、としばしば耳にしている。こうした“残念”な経営改善計画書は、計画数値の「一人歩き」を助長し、経営状況を混乱させ、さらに経営改善の芽を摘む可能性も秘めている。
そもそも収益を創出するのは、事業活動なのである。そして、事業活動によって収益を着実に確保できる状況を実現するには、商品力・技術力の強化、販売経路の拡充が必要条件であり、さらにそのためには人材の確保・育成、組織体制の整備・強化が不可欠である。こうした経営基盤の強化に向けた取り組みが行動計画として盛り込まれることで、経営計画の実行性は高まる。経営改善計画も経営計画の一種であり、この要件を満たさなければ、策定の意義は半減してしまう。