前回に続き、学卒者の採用を目指す中小企業の留意点について述べてみたい。
■安心して働き続けられる環境を整備できているか?
中小企業だけではなく、大企業にも共通することであるが、採用した人材をいかに定着させるかも大きな課題と言える。そして、入社後の安心感を醸成する要素の1つが、人材育成の「仕組み」である。
かつては、「見て盗め!」、「体で覚えろ!」などという理不尽な教え方も一部ではあったが、時代は変わり、今は「ほめて育てる」のが一般的になりつつある。時には「説教」も必要であろうが、仕事の心構え、基本的な業務知識や仕事の進め方などを一つ一つていねいに教えていく取り組みは、人材定着の必須要件である。
厚生労働省によれば、大卒者の3年以内の離職率は3割を超えている。この離職率自体は、ここ数年に限ったことではなく、実は過去から同様の傾向が続いている。つまり、ただ単に「我慢が足りない」「打たれ弱い」などという論理は通用しないのである。
人材育成の「仕組み」には、「育てる人材」と「育てる手段」が必要である。より具体的には、
・有能な先輩社員をOJT担当者とし、OJTに必要な基礎知識を習得させる
・OJTに必要な業務の手引書(まずは簡易なもので可)を会社として整備する
のである。
さらにOJTは、教える側の先輩社員の教育にも有効であり、将来の管理者を養成するチャンスでもある。
入社後の「安心」につながる人材育成の仕組みは適切に整備し、積極的にアピールしたい。
■経営者自身の魅力は?
求職者側の視点で捉えると、入社を検討するに際し、「上司を選ぶことはできないが、社長を選ぶことはできる」のである。つまり、経営者自体が、採用に大きく影響する。
多くの中小企業では、「社長=会社」である。中小企業の魅力は、経営者自身の人柄、価値感、生き方などが色濃く映し出される。経営者の夢、思い、将来ビジョンを積極的に伝えた方が良い。