昨日から2日連続で、長野県と県中小企業振興センター共催の商談会事前セミナーで講師を担当させていただいている。講座のテーマは「値決め」。今夏以降に予定されている商談会にのぞむに当たり、出展する食品・農産物の価格設定について学んでいいただくというのが趣旨である。

農業や食品加工業に限らず、価格設定の問題点に起因して、赤字になっている事業者が散見される。たまたま先週相談に対応した事業者も、過去から続いてきた価格設定の欠陥(値決めがめちゃくちゃ!)がもとで、恒常的に赤字が発生し、その累積損失が資金繰りに悪影響を及ぼしていた。

かつてビジネススクールの恩師が紹介してくださった、稲盛和夫氏の著書「心を高める、経営を伸ばす」には、「値決めは、経営を大きく左右する」と記され、こんな記述がある。

「どの値をとるかということは、トップが持っている哲学に起因してきます。強引な人は、強引なところで値段を決めるし、気の弱い人は気の弱いところで値段を決めるでしょう。
もし値決めによって会社の業績が悪くなるとすれば、それは経営者の器の問題であり、心の問題であり、経営者の持つ貧困な哲学のなせる業だと私は思います。」

これは、単に「価格を上げろ!」という単純な話ではない。その根底には、「価格は価値と表裏一体の関係にある」という普遍原理が存在しており、顧客にとっての価値を高めながら、その対価として適正な価格を設定することの重要性を説いていると解釈できる。これは、営利を目的とする事業活動の本質とも言える。

顧客にとっての価値の向上は、日々の仕事における創意工夫や努力によって実現される。そう考えると、値決めは、経営の成否を測る「ものさし」にもなりそうだ。