前回のブログで、AIによる士業(サムライ業)業務の代替可能性について述べた。中小企業診断士のAIによる代替可能性は低いとの予測はあるものの、診断士業務の一定領域はAIに代替される可能性が高いというのが個人的見解だ。ということで、AIの進化や普及も、診断士にとっての外部環境の一要素と捉え、どのように活用するか、さらにどのようにすみ分けを図るかという「戦略」を検討しておく必要がある。

前回紹介した日経記事では、中小企業診断士は「経営者を説得する能力などが重要で、代替可能性は低い」と指摘されていたが、そうとも言い切れないと思う。というのは、データをもとに理路整然とした現状分析とそれにもとづく戦略をAIが提示できるとしたら、経営者も相応の説得力を感じ納得感を持つだろう。診断士よりもAIの提言を選択する可能性はかなりある。

そんな中でより重要になってくるのは、人間である診断士としての「感性」である。
かつて恩師から『「野村監督」と「長嶋監督」』というマーケティングに関わる原理原則を教わったことがある。野村監督はID野球で、データにもとづく指揮・采配を重んじたが、一方の長嶋監督は“勘ピューター”にもとづく独特の感覚で采配を振るった、という対比である。経営論に置き換えると、「野村監督」はデータを重視するマーケティング戦略、「長嶋監督」は感性を重視するマーケティング戦略であり、ケースバイケースでどちらも有用である。

AIに対して診断士は、「長嶋監督」的な立ち回りが今後よりいっそう必要になってくるように思える。経営者の思いや価値感などデータには置き換えられない部分に寄り添ったコンサルティングが、診断士生き残りのカギになるだろう。
もっと感性を磨かなくては・・・と思う。