2か月ほど前になるが、理容組合の経営セミナーで講師を担当させていただいた。これまで理容店の経営に関わる場面はあまり多くなかったが、私にとっても貴重な経験であり、学びの機会ともなった。

理容業界の現状を調査していく中で、多くの理容店にとっての問題点が浮かび上がってきた。それを3つに集約してみると・・・
❶所得の伸び悩みなどに伴う節約志向の定着で、理容店の利用頻度が低落しており、従 来型の理容店を中心に、売上と利益の減少が続いている。
❷ファッション志向、スカルプケアなど顧客ニーズの変化に十分対応できず、美容店な ど他業態に顧客が流出している。
❸業績の低迷に伴い、経営不振による閉店や後継者難による廃業が増加している。

もともと従来型の理容店では固定客の割合が高く、厚労省の調査資料によれば、全体の8割以上の店舗において、固定客の割合が80%以上になっている。
また総務省「家計調査年報」によれば、理容での1回当たり利用料金は、平成7年が2,849円、平成28年が2.592円で、1割程度の低下にとどまる一方、年間の利用回数は、平成7年の3.44回から平成28年には1.97回に減少している(減少率は約43%)。
つまり、常連客はお店に来ればそこそこおカネを使ってくれるが、来店の頻度はかなり減っている、というのが実情だと考えられる。

「売上高=客数×来店頻度(回数)×単価 」という視点から分析すると
・客数:ほとんどが固定客。新規客はあまり獲得できていない。
・来店頻度:節約志向の定着で、利用頻度が低落。
・単価:利用単価は若干低落傾向。
という構図であり、売上確保に苦戦している理容店も多いであろうと推測できる。そんな中で理容店にとって売上確保が存続の条件になるが、そのための経営課題として
・客数の増加(新規客の獲得)
・利用頻度の増加
・単価の引き上げ
に取り組まなければならないという状況なのだ。

<次回へ続く>