ここ最近、経営支援分野において「事業承継」が重要視されている。中小企業庁は、今後5年程度を事業承継支援の集中実施期間と設定し、「事業承継5ヶ年計画」を策定している。
日本国内ではすでに少子高齢化の傾向が顕著であるが、中小企業経営者の高齢化も同様に進行している。同庁の調査によれば、今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず、6割が後継者未定の状態であり、70歳を超えた経営者でも、事業承継に向けた準備に取り組んでいるのは半数ほどにとどまっている。後継者不在ということは、現経営者による会社経営の続行が不能になった時点で廃業になることを意味する。

個人的な見解だが、廃業そのものはそれほど大きな問題ではないと思う。少子高齢化により、日本の人口はほぼ確実に減少する。人口減少とは、すなわち日本国内の市場縮小であり、市場が縮小すれば、当然淘汰のメカニズムが作用し、現存する企業すべてが存続することは困難だと想像できる。他方、経営基盤(人材、技術、生産設備、顧客、資金など)がある程度強固な企業は、市場が縮小する中でも、存続する可能性が相対的に高い。後継者不在の最大の問題は、「本来ならば存続可能な企業」が消滅することだ。
昨日2月27日の日経朝刊では、黒字であったにも関わらず廃業した町工場、そして老舗和菓子屋について取り上げられていた。黒字ということは、相応の社会的な価値があるわけで、それが失われるということは、社会的損失も大きいと言える。

政策的には、より広範な企業の承継を支援することになるであろう。しかしながら経済的合理性だけでなく社会的有用性の視点からも、「本来ならば存続可能な企業」を重点的に支援することが必要であろう。M&Aなどの手段は、以前に比べればより一般的になっているものの、お互いの「相性」といった要素も絡んでくるので、簡単な話ではない。
われわれ診断士を含む専門家、支援機関は、「本来ならば存続可能な企業」に対して、ある程度「世話を焼く」ぐらいの心構えで次代へのバトンタッチに関わっていくことが必要かもしれない。