長野県内の製造業では、完成品の製造よりも部品の製造に関わる企業の割合が高い。そうした状況を製造現場の従業員の視点から考えると、完成品の製造であれば、顧客(ユーザー)や利用場面を比較的容易に想像できるが、部品製造の場合には、出荷後の製品の利用場面をなかなか想像できないのではないか。納品先で自社の部品がどのように利用され、さらに完成品として、ユーザーにどう役立っているのか、つまり顧客を知ることが、とても大切だと思う。

ある金属部品を製造している企業では、来訪する得意先の担当者とのコミュニケーションが緊密であり、製造現場の従業員に対しても部品が得意先でどのように利用されているのかしばしば説明されているとのことであった。得意先の事情に対する現場従業員の理解度が高まることで、その金属部品メーカーの製品の客先不良率はゼロとなっている。顧客の顔が見えることで、製造現場の品質に対する意識がよりいっそう高まる効果もあったのだろう。

「顧客を知る」とは、自社の商品(モノ・サービス)の「5W1H」について理解することと言い換えられるのではないか。「誰が(What)」「どこで(Where)」「いつ(When)」「何を(What)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を知ることは、直接的に顧客と接するサービス業や小売業にとどまらず、顧客の顔が見えにくい部品メーカーの従業員にとっても必要だ。

別の部品メーカーでは、自社製品の用途・利用場面について、工場内に説明書きを張り出し、顧客についての理解度を高める工夫をしている。従業員の教育にも効果を発揮しているようであった。

従業員の意識付け、現場の活性化に向けて、普段顧客との直接の接点を持てない従業員が「顧客を知る」機会を積極的に設けてみてはどうか。