ここ数年、県内の商工会・商工会議所が主催する創業セミナーに毎年関わらせていただいている。創業時に必要な経営知識・情報をテーマにした講義、創業計画の策定支援が主な役割である。創業セミナーでは、受講者が創業計画書を完成させることがひとまずの目標になる。創業セミナー修了後、実際に創業する場合もあれば、創業に至らない場合もあり、受講者の意志や事情によってその後の状況はさまざまである。
こうした創業支援は、それなりに役に立っているであろう・・・と感じているものの、本当に効果があったのかを検証することは難しい。特に、創業セミナー終了後に受講者と接点を持てる機会は限られてしまい、創業した事業の状況がどうなのかは、商工会・商工会議所の担当者とのコミュニケーションが頼りである。

他方で過去に、創業から半年ほどで閉店・廃業に至った場面に数回遭遇している。それらはいずれも飲食店であったが、考えられる閉店・廃業の主な要因は、当初の事業計画・見通しの甘さである。そしてさらに問題なのは、計画と現実との「ズレ」を掘り下げていないことである。こうした創業後の経営改善に関する相談の依頼は、すでに「ズレ」が拡大し、経営状況が悪化した段階で舞い込む場合が多いが、タイミングが遅くなるほど「手遅れ」の状態になる。

そもそも計画は、不確実な将来の予測にもとづき策定されるものであり、実際には「やってみないとわからない」のである。それゆえ、計画と現実との「ズレ」を早めに確認し、その要因を追求することが不可欠である。いわゆる「Plan-Do-See」のサイクルを回さなくてはならないのだ。支援者として、この部分を十分に手当できていなかったかもしれない・・・と自身も反省している。
実は以前から、各種支援機関による創業支援が、創業そのものに傾斜しすぎているのでは・・・と疑問に感じている。本当の勝負は、創業ではなく、創業後の事業活動であり、より重要なのは、創業から経営にレベルアップすることだ。

「だれでも創業者になれるが、経営者になれるとは限らない」・・・機会があるごとにそう言っているのだが、これからも創業後の経営支援をより大切にしていきたい。