10年以上前に放映されたドラマ「ハゲタカ」で今でも記憶に残っている印象的なシーンがある。主人公の鷲津政彦(NHKドラマでの配役は大森南朋)が大手電機メーカーの買収を仕掛けた場面で、電機メーカーの創業者で年老いた会長(配役は菅原文太)に向かってこんなセリフは発した。
「会長が亡くなった後も、会社は生きつづけなければならない。」
企業が存続し続ける重みをズバリ表現した言葉で、診断士として仕事をしている今になってしばしば思い浮かぶフレーズだ。
経営者の高齢化と後継者不在により中小・小規模企業の事業承継問題が顕在化しかつ深刻化している。経営者も確実に歳をとり、そしていつか亡くった時に会社をどう生きつづけさせるか・・・・・これは重大な課題だ。
こうした中で検討したいのがM&Aの活用だ。「ハゲタカ」の影響でM&Aに対するマイナスのイメージも付きまとうが、実は私もサラリーマン時代に2回M&Aを経験している。1番目の会社では買収が、3番目の会社では合併があった(この話は次回改めて取り上げる)。当時よりもM&Aはより身近になってきており、事業承継の有力な手段の1つである。
中小・小規模企業向けM&Aのプラットフォームとして、トランビ(TRANBI)は注目したいツールだ。事業の譲り手(売り手)と引き継ぎ手(買い手)をインターネット上でマッチングしている。2018年度の中小企業白書でも紹介されており、登録ユーザー数は10,000件を超えてさらに増加中で、全国の金融機関や専門機関との提携も進展している。M&Aの成約実績もかなり増えているとのことだ。最大のメリットは、従来のM&Aで大きな制約になっていたコストの低廉さ。売り手は高額の手数料を負担する必要がなく、手数料を負担するのは買い手側で、しかも従来のM&A手数料よりもかなり廉価である。
トランビの運営にはまだ課題もあるようだが、事業承継において中小・小規模企業にとっての「救世主」になるかもしれない。今後もその動向を注視したい。