飲食店の経営相談や支援に関わる場面が多くあるが、その中で競合関係をより幅広にとらえる視点が必要になっている。飲食店のライバルは飲食店だけではないのだ。
■中食の台頭
「食」に関わる大きな流れとして、いわゆる「外部化」が進行している。外部化とは、生鮮食品を自ら調理するよりも、加工食品や外食を利用する場面が増えている現象を意味する。農水省「平成26年度 食料・農業・農村白書」によれば、全世帯の食品支出に占める生鮮食品の割合はすでに30%を切り、さらに低下が続いている。他方で外食および加工食品に対する支出割合は上昇傾向だが、特に加工食品(いわゆる中食)の割合が伸長しており、外食の割合はほぼ横ばいで推移している。
外食の市場規模は1990年代後半をピークに縮小する傾向にある。その要因として、①人口減や高齢化による食需要の縮小、 ②節約志向の高まりによる低価格化の進行があり、そして③コンビニエンスストア(CVS)や食品スーパー等の品揃え拡充に伴う中食市場の拡大、等が考えられる。①は外食だけに留まらない事情だが、③は外食にとって大きな脅威になっている。
CVSや食品スーパーなどは、 共働き世帯の増加による食に対する「時短需要」を着実にとらえ、品揃えを拡充してきている。CVSの売り場に並ぶ惣菜は、種類・質ともに充実しており、一部の惣菜の味は、もはやレストランをしのぐレベルに達したのでは・・・と実感したこともある。
■飲食店の生き残りのカギは?
飲食店運営の基本は、いわゆるQ、S、Cである。Quality(品質)、Service(サービス)、 Cleanliness(清潔)の3つの要素が飲食店として提供する価値になる。この価値が価格とバランスしているかどうかで、店の成否が決まる。飲食店だけにとどまらず、中食との競合も激化する中で、「美味いものを出せば、客は来る」という時代ではないのだ。
CVSの惣菜にはできない、「外食らしさ」を発揮するために、 Q、S、Cの見直しと磨き上げを継続することが、飲食店の生き残りのカギだと思う。