小売や飲食サービスなどの新規創業において最も重要な課題は、店舗の選定である。理想は希望の店舗をゼロから新築することだが、通常は空き店舗を賃借することになる。いわゆる「居抜き物件」の場合でも、店舗開設にはそれなりの金額の設備投資をしているため、一旦開業すれば、そう簡単に別の場所に移転できない。店舗選定の成否が、その後の事業に大きく影響すると考えて良い。したがって、店舗の立地、広さや構造などを慎重に検討した上で、店舗の選定を進める必要がある。

「空き店舗」の画像検索結果

■開業後ではなく開業前に相談を!
しかしながら、新店舗開業から数ヶ月してから「売上が計画を大幅に下回っている」ということで経営相談を受ける場面がかなりある。売上低迷の要因が、店舗の立地などではなく商品の問題などの場合もあるが、店舗の選定にやや問題があったと思われる場合も多い。たとえば、車で来店すると見込まれる顧客がターゲットなのに駐車場がない、道路から店舗が視認しにくく素通りされる、店舗構造の問題でオペレーション効率を上げにくい、などである。支援する側としては、開店した後ではなく、開店する前に相談して欲しいというのが、率直な本音だ。

■立地の不利を乗り超える?
他方で、「立地は言い訳にならない!」という一説もある。大型店のように大量集客が必要ではない小規模店であれば、立地はあまり関係ないという考え方である。立地条件がそれほど良くなければ、家賃も比較的安価というメリットもある。実際、「こんな場所なのに?」という店が繁盛店になっていることはある。立地の不利を乗り越えるだけの商品力とプロモーション力があれば、十分に実現可能だと思う。

■大切なのはやはり戦略
目立たない店舗ならば、「隠れ家」という位置付けで商品力や接客力、店の雰囲気で勝負すると割り切って運営するという経営戦略を立て、愚直に継続することでファンとなる固定客を増やせば良い。「立地が悪い」と周囲から言われたもののブレに営業を続け、行列ができる繁盛店になったラーメン店も身近にある。
一番拙いなのは、自分が思い描く理想像が選定した店舗とミスマッチであるにも関わらず、そのまま突っ走ってしまうパターンだ。自身の理想像を曲げないなら、店舗を妥協で選定してはいけない。また逆に店舗の実情を踏まえて、商品やプロモーションなどのマーケティング戦略を軌道修正して行く柔軟性、さらに時には大胆さも必要だ。