先日、コンビニエンスストア(CVS)チェーン最大手・セブンイレブンの24時間営業をめぐり、FC本部と店舗オーナーとの対立が報道されていた。店舗運営に必要な店員を確保できず24時間営業を休止したことに対して、本部が多額の違約金を請求したとのこと。あくまでも推測だが、FCの契約内容において24時間営業に関する約定、さらに違約金に関する取り決めもあると思われ、違約金請求そのものは適法な行為なのだろうが、他方で24時間営業を前提とした従来からのCVS店舗運営が限界に近づいていることも示唆していると思う。

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■制約条件は「ヒト」
CVS以外にも外食業界での労働力不足が深刻になっている。先週、昼食で入店した某ファミレス店では、70歳を超えているのでは・・・と思える年輩の女性がホールの接客スタッフとして働いていた。注文した料理を間違えないか・・・と少々不安も感じたつつ、頼んだ料理が出せれて安堵した。数年前ならばこんな場面に遭遇することはなかったに違いない。
こうした状況を踏まえ、ロイヤルホストは2017年から全店舗で24時間営業を取りやめ、営業時間が短縮されている。長時間労働の是正が社会的な要求になってきている中で、24時間営業を支えるだけの人的資源を確保することが現実的ではないとの判断があったと推察する。「ヒト」が事業展開上の制約条件になっている。
経営資源として「ヒト」、「モノ」、「カネ」がしばしば挙げられるが、ヒトは、モノ、カネとは全く異質な資源だ。調達コストがゼロに近い状態で確保できるカネ、そしてそのカネをもとにネットを駆使すれば必要に応じて容易に入手できてしまうモノ。この2つの資源の確保は、それほど難しくない。他方で、ヒトは簡単には増やせない性質の資源なのだ。これまでの多店舗化ビジネスは、ヒト、モノ、カネを経済的合理性にもとづき確保しながら収益に創出することを前提にしているが、この前提は今後成り立たないであろう。

■戦略としての「縮小」もあり?
FC、直営のどちらかに関わらず、多店舗化ビジネスは店舗数の増大による成長を志向してきているが、ヒトの制約条件を踏まえると、人材の視点から店舗網の「縮小」を図ることで既存店舗の質的な強化を重視する戦略に転換していくことも有効だろう。実際に前掲ロイヤルホストの業績は堅調で、運営会社のロイヤルHDは台風などの影響で2018年12月期こそ増益予想から一転営業減益となったものの。19年12月期は営業増益が予想されている。
ヒトに代わり、ITを駆使した無人店舗運営や店舗オペレーションでのロボット活用などのイノベーションも同時進行しているが、大きな転換点を迎えている多店舗化ビジネスの動向を注視したい。