牛タンと麦とろめしで有名な「ねぎし」。東京出張の際には、食事で立ち寄ることが多い。都内在住だった頃からもう20年以上利用している。現在は東京都内と横浜地区で約40の店舗を営業している。
BSE問題の後、牛肉の価格が高騰した影響で、20年前に比べると価格はだいぶ上がっているものの、デフレスパイラルをほぼ脱した今日では、かなりお値ごろ感を感じる。
先日の東京出張時にも、東京駅近くの店舗で昼食をとった。12時少し前のちょうど混み合う時間帯で、店前には数名の行列ができていたが、先に待っていたグループ客よりも先にカウンター席に通してくれた。行列に並んでいるときに料理の注文を受けていたので、席について3分ほどで料理が出てきた。行列に並んでから料理が提供されるまでの時間は10分程度だった。
飲食店の業態やコンセプト、メニュー構成などにより異なるものの、一般論としてレストランで注文を受けてから料理が提供されるまでの待ち時間は、昼が10分程度、夜が15分程度であれば良と言われる。ねぎしの対応は、かなり優秀だと言える。
以前から、ねぎしの優れた店舗オペレーションには関心を持っているが、設備・備品とヒトが有機的に機能し、注文 ~ 調理 ~ 配膳 ・・・・・ 下膳という業務プロセスのサイクルが高速で回っているのが見ていてよくわかる。
■オペレーションのKSFは?
ヒトの動きを観察してみると、いくつかのKSFが見えてくる。その1つが、スタッフの「目配り・気配り・心配り」だ。
☑目配り:店前の行列の状況、客の食事の進み具合、空き席の状況などをホールのスタッフがよく見ている。
☑気配り:周りのスタッフの作業も円滑に進むように、まめな声掛けを行っており、密なコミュニケーションによるスタッフ間の情報共有ができている。
☑心配り:限られた客の昼食時間を考慮し、待ち時間を短縮するための席誘導をしている。
また、マルチタスク化ができており、手の空いたスタッフが他のスタッフを適宜サポートしている。結果的に客席回転率はアップする。
■堅実な出店戦略
ねぎしは店舗数を着実に増やしているものの、新規出店のペースはほぼ年1店舗にとどめている。ムリな出店はせず、人材の確保や育成を優先し、料理やサービスの質の維持・向上を重視していると推察できる。客の視点で見ると、飲食店としてのコストパフォーマンス「(Q×S×C)÷価格」はかなり高い。
■ESレベルも高い?
スタッフの動きを観察をしていると、昼の繁忙な中でもスタッフが仕事を楽しんでいるかのような表情を感じ取れることができる。会社の内情を知ることはできないが、ES(従業員満足度)のレベルは一般的な飲食サービス業よりも高いのではないか。
人材の育成を重視することで、個々のスキルレベルが上がり店全体の仕事がうまく回る。大変な仕事であっても「できる」という手応えや自信を持つことができれば、ヒトは楽しさや喜びを感じるものだ。スタッフの元気の良さは店の雰囲気を良くし、結果的にCS(顧客満足度)のレベルを高めている。
個人的には、飲食サービスの「オペレーショナル・エクセレンス」と呼べる存在だと思う。また次回の訪店時にいろいろと学ばせてもらいたい。