M&Aにおける株式譲渡では、企業価値の評価の妥当性が問題になる。そんな中で「スモールM&A」においては、比較的簡便な方法で評価される場合が多い。
一般的な企業価値の評価方法には、主に❶収益方式、❷比較方式、❸資産方式の3つがある。
❶収益方式:将来の予測収益・キャッシュフローに対して一定のリスクを反映して算出。
❷比較方式:業界や規模などで当該企業に類似する会社の株価を参考に評価。
❸試算方式:当該企業の資産と負債を評価し企業価値を算出。
いずれもの方式も、メリットとデメリットがあるが、スモールM&Aにおいては❶と❷による評価はそれほど多くなく。❸をベースに「のれん」を加算する方式が多くに用いられる。
より具体的には、「時価純資産+営業権」という算出方式で、会社の純資産を時価評価したものに、一定期間の実質的な営業権を加算するのである。営業権は、通常3年~5年分の実質利益(営業利益などに過度な役員報酬や節税目的の経費を加味したもの)が用いられる。
M&Aの交渉についても、「スモールM&A」では経営者の即断で決まる場面も比較的多い。
大企業のM&Aでは、交渉の窓口は企画部門などの担当者であり、つまりサラリーマンだ。「うまくやらなければ、上司に怒られる!」というサラリーマンならではの潜在意識も働き、大手監査法人のデューデリなども活用しながら、無難に対応しようとする。つまり時間も手間もかかる。
他方で、中小企業のM&Aでは、経営者自身が直接関与する場合が多く、その独特の直感から交渉相手に対する感触を評価する。ファイナルアンサーを下せる経営者自身が納得感できれば、早期に話もまとまりやすい。
企業の売り手としては、高く売れるに越したことはないが、中小企業の社長にとっては自分がつくり上げた会社を安心して任せられるか・・・という感情的な要素も大きい。
後継者がいない中小企業でも、存続させられる手段は確実ある。オーナー経営者にとっての会社は人生そのものであるが、納得できる形で会社を譲りハッピーリタイヤを実現できる「スモールM&A」を検討する価値は大いにあると思う。