今年7月に「事業継続力強化計画」の認定制度が施行されている。この制度は、近年頻発している自然災害に向けた防災・減災の事前対策を計画することを中小企業に奨励するもので、経済産業大臣による計画認定を受けた中小企業には、防災・減災に関わる設備導入時の税制優遇や補助金申請時の加点措置などの支援施策の活用が可能になる。
(参考→ https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/2019/190905keizokuryoku1.pdf

先週公募が締め切られた「ものづくり補助金」でも、計画認定が加点項目の1つになっていたが、実はその加点を主な目的として、計画策定の支援を行った。防災・減災の事前対策という本来の趣旨よりも、補助金獲得という目先の目的を重視したのは事実で、潔い動機とは言い難いが、「目の前にぶら下げられたニンジン」に飛びついた結果として、企業のリスク管理を見直すきっかけになるのであれば、それはそれで可だと思う。それは、やった方が良いことは分かっていても、実際に行動を起こすことはかなり難しい・・・という現実があるからだ。

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計画書に記載する主な内容は以下の通りである。
・事業継続力強化に取り組む目的を明確化する。
・ハザードマップ等を活用して、自社の事業拠点の自然災害リスクを認識し被害想定を策定する。
・発災時の初動対応手順(安否確認、被害の確認・発信手順等)を策定する。
・ヒト、モノ、カネ、情報を災害から守るための具体的な対策を検討する。
・計画の推進体制(特に経営層の関与)を整える。
・訓練実施、計画の見直し等、その実効性を確保する取組みを検討する。
・状況に応じて、外部との連携の体制と取組、取組に向けた関係社の合意を検討する。

当然のことながら、各企業の実情により、できることとできないことがあるわけで、できないことを計画に盛り込む必要はない。

計画策定の手引きが公表されており、これが教科書に相当する。
(参考→https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/2019/190917kyokatebiki.pdf

この手引きの作成には、大手監査法人が関わっているが、不慣れな中小企業にとってはややわかりにくい箇所もあるというのが個人的な感想だ。ただ、計画で求められていること自体は比較的簡易であり、商工会議所や商工会などの支援機関、あるいは我々中小企業診断士に問合せをしても良いと思う。

まずは、地元のハザードマップを見ながら、自社の周りにどんな災害リスクがあるのか知ることだけでも良いと思う。それでも、一歩前進である。リスクが見えれば、不安を感じて当然であり、それが防災・減災を検討するスタートラインだ。

個人的な推測だが、消費税率引き上げに伴う経済対策を盛り込んだ今年度の補正予算が編成される可能性が極めて高く、そこにはものづくり補助金などの補助施策が確実に盛り込まれると予想できる。
「目の前のニンジン」がきっかけでもいい。前向きな計画策定に着手する価値は大いにある。