10月に入り2週続けて農業関連の講演会、展示会に足を運んだ。いわゆる「スマート農業」に関わるさまざまな技術や製品は特に目を引いたが、農研機構などの公的セクションだけに留まらず、成長が期待される分野ということで多様な民間企業が参入してきており、イノベーションが加速しつつあることを実感できたのが大きな収穫だ。

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■農業は衰退産業?成長産業?
農業の就業人口は200万人を割り込み、この20年間でほぼ半減しており、さらに就農者の平均年齢は66.8歳(2018年時点)で高齢化が着実に進行している。農業総産出額も、近年やや持ち直しているとは言え、ピークだった1980年代後半から2割以上減少ている。また、耕作放棄地の増加も深刻で、2015年時点で42.4万haに達しており、その広さは富山県の面積にほぼ匹敵する。
こうした事実は、解釈によっては「農業は衰退産業」ということにもなるが、逆に就農人口の減少により1人当たりの農地は拡大するという解釈も成り立ち、規模拡大による生産性向上の余地が広がる。ただし、農地面積の拡大は生産性向上に直結するわけではなく、従来からの生産技術に対する何らかの革新が不可欠になる。栽培方法の変革、ITやロボット技術の導入などが、「農業は成長産業」という解釈の前提条件である。
展示会を視察した実感として、圃場管理や生産管理でのIoTの導入、ドローンによるセンシングとAIを組み合わせた画像解析、GPSによる自動運転などは、徐々にではあるが実用化に移行しつつあり、今後はコストの低減による経済的合理性も十分に見込めると思われる。
また水稲の栽培技術でも、直播の場合の収量変動について実験と検証が進んでおり、育苗による定植とあまり遜色ない収量が確保できる目途が立ってきているようだ。

ただし、当然のことながら成長産業になるための課題もあり、その1つは農業機械の投資負担の大きさだ。高機能化により機械の購入価格はかなり高額になっており、中には高級外車をしのぐ高価な機械もある。その一方で、耕作面積が拡大する場合、農業機械の耐久性が問題になるが、農業者の声として、国内メーカーの農業機械は大規模化に耐えうる強靭性においてまだ課題が多いようだ。

■成長の追い風をいかにとらえるか?
スマート農業にも多くの課題が残されているが、ITやロボット技術などによるイノベーションをテコにして、農業経営の持続性確保や高度化を図ることは、経営戦略としてより重要になってきている。限られた資金をどの技術に投入すべきかという経営判断が難しい場面も多いと想像するが、スマート農業という成長の追い風を前向きにとらえ、風に乗ってみる価値はあると思う。

衰退産業とされてきた農業が成長産業に変わる、その「夜明け」は意外に近い気がする。