飲食サービス業での人手不足が深刻になっているのは周知のことだが、その解決に向けて現場でのロボットの活用が今後進みそうだ。
10月28日の日経朝刊に「飲食ロボ 調理も 下げ膳も」という見出しで。飲食店向けロボットの開発が取り上げられている。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51390320V21C19A0FFR000/)
センサー技術やロボット技術の進化などにより、調理やホールでの作業で導入の余地が拡大してきている。
■拡大しそうな飲食ロボの活用
記事で紹介されていた「たこ焼きロボット」は、焼き加減を画像センサーで認識し、ひっくり返す必要のあるたこ焼きを見つけられるそうで、ロボットの導入で人の仕事を7時間削減できたとのことだ。人手の問題も然ることながら、個人的にはロボット導入による品質安定のメリットも大きいと感じる。人間と違いロボットは作業のムラがなく、決められた品質を安定して実現できる効果は大きい。
また、客席からお盆を取り下げたあと、食器を洗って元の場所に戻すロボットも開発されているとのことで、食器を洗い、ベルトコンベヤーで運んだ後に、センサーで食器の種類を認識して、ロボットがアームで持ち上げて種類ごとに収納することまでできる。来年には発売される計画だそうで、下げ膳の作業負担の軽減が期待できそうだ。
比較的安い人件費を活用してきた飲食ビジネスは転換点を迎えており、生産性向上の観点からも、ロボットの開発~導入が今後もさらに活発になるだろう。
■飲食ビジネスが「サービス業」であるためには?
実は個人的にこの記事において最も興味深かったことは、食文化に対する考え方の違いだ。
それは「米国ではチップで稼げる接客が重要で、調理場の自動化が日本に比べて進んでいる」という記述だ。海外では、「作る」に対するロボット活用が進んでいるが、接客を「おカネをもらえるサービス」を捉えている。日本ではチップの習慣がなく、時にはタダやおまけを「サービスする」と言うことさえある。文化の違いは致し方ないものの、サービスに対する考え方の違いは、日本のサービス業における生産性低迷の最大の要因だと思う。
チップをもらうかどうかは別として、飲食ビジネスでは接客をより重視し、評価や感謝されるものに変えていくことが重要で、それは結果的に利益にもつながる。人手不足であれば、人がもてなすサービスの価値を高める必要性は高い。画一的な作業をするロボットが普及すれば、むしろ人による心温まる接客の価値は確実に高まる。飲食ロボ時代が到来する中で、飲食ビジネスに関する発想も変える必要があるそうだ。