現在TV放映中のドラマ「半沢直樹」は、20%をはるかに超える視聴率を維持したまま、これからクライマックスに差しかかる。7年前の放映時には半沢の決め台詞「倍返し」が流行語になり、主人公だけにとどまらない脇役陣の強烈なキャラクターやスリリングなストーリー展開で、平成のドラマ史上最高の視聴率を記録した。
このドラマの内容に対しては賛否両論があり、私自身も「それはないだろう!」と感じる状況設定が時折あるものの、ドラマというエンターテイメントとしてみれば、まあ良いと思う。
そんな中で、私自身は半沢というキャラクターを少し違った視点から分析しつつ視聴している。

■部長、次長としての半沢直樹は?
半沢は、東京セントラル証券の営業企画部長、異動後は東京中央銀行の本店営業部次長という役職にあり、組織上はいわゆる中間管理職の立場である。
現在の経営学においては、中間管理職というポジションではなくマネージャーという役割や機能がより重要視されるが、ここでは中間管理職とマネージャーを同義として考える。
一般的に、会社組織における中間管理職に対しては、❶リーダーの役割、❷フォロワーの役割、❸コーディネーターの役割、❹プレーヤーとしての役割、❺環境対応の役割の5つの役割が求められる。それでは半沢直樹は、これら5つの役割を果たせているいるのだろうか?

❶リーダーの役割
自らの職場(集団)を率いるリーダーとして、職場の目標達成に向けて部下に働きかける任務を持つ。そのためには、自らの職場が進むべき基本的な方向性を設定し、そしてその基本的な方向性に部下をスムーズに進ませることが求められる。
半沢は、東京セントラル証券の部長として、ITベンチャー企業から支援を依頼された敵対的買収への防衛に向けて、顧客担当の部下や他の部員に対して明確な目標や方法性を提示し、部員それぞれに役割を付与することで、結果的に買収を阻止することに成功している。また、部下に発した「感謝と恩返し」という言葉は、自身の仕事の本質的な意義をシンプルに表現したもので、銀行の出向者に対して抱いていたコンプレックスを除去し、仕事に対する目的意識を醸成している。
リーダーの役割は十分に果たせており、優秀なリーダーと言えそうだ。

❷フォロワーの役割
上司(半沢の場合には役員など)が率いる集団のメンバーとして、上司を補佐しその指示を遂行する任務を持つ。そのためには、上司の目標・方針を消化して、自らの職場の目標・方針に落とし込みを、結果として期待された成果を上げることが求められる。
半沢は銀行復帰後、大手航空会社の再建案件において頭取からの勅命で融資債権の保全を担当することになったが、頭取の意向に従い、政府からの債権放棄の要請を拒否するよう役員会で上申している。敵対関係にあった役員(大和田取締役)と一時休戦なのかは不明だが、正常な形態ではないにしても、銀行の危機的状況に対してその役員と必要なコミュニケーションを図っており、重要事項も適宜報告している。大和田元常務を含めて不正に関与した上司に「倍返し」をしているものの、半沢が抱く正義の下では、どうやらフォロワーの役割も果たせているように思われれる。

次回に続く。