2021年がスタートして早くも1ヶ月が経過し、コロナ「第3波」の中だが大きな問題もなく日常活動を続けることができている。
もうだいぶ前のことのように感じるが、今年の年始は久々にゆっくり休養でき、未読本も手に取ることができた。せっかくの機会なので、仕事に直接関わりがない本でも・・・と溜まった未読本から「資本主義の新しい形」(https://www.iwanami.co.jp/book/b492584.html)を選んで開いてみた。なぜこの本を購入したかの動機が思い出せなかったが、時間に余裕がある時こそ少し重い本に挑むのも良いと思った。
本書はマクロの視点から資本主義の構造変化を「非物質化」という切り口で分析しており、その論説からの学びはかなり多かった。特に先進国で経済停滞が長期化する構造的な問題が、ミクロレベルの個別企業による投資行動から連動しており、特に日本の場合には、「投資の非物質化」の遅れが生産性の低迷、産業構造転換の遅れにつながっているとの指摘は印象的であった。米国やドイツなどの産業に関する研究をもとに、有形資産よりも無形資産に対する投資が成長を促進することを明快に指摘している。特に製造業における過度な「ものづくり信奉」を問題視している。製造業の経営者による「ものづくり信奉」がITや人的資源に対する投資を渋らせ、結果的に国際的な競争力が低下しているとの指摘は、かつて花形だった電機産業の凋落を見れば、かなり説得力がある。
コロナ禍で多くの企業でIT活用の後進性が明らかになり(最も遅れているのは行政機構だが)、昨年後半あたりから盛んに「デジタル化」が叫ばれているが、ようやくIT活用の高度化に国を挙げて進み始めたことで、「禍転じて福となる」のかもしれない。
しかしながらさらに必要なのはヒトへの投資だろう。OJT以外の人材育成投資のGDP比率は、日本では1%を大きく下回り先進7カ国で断トツの最下位である。たしかに事業者へのヒアリングでも「ウチは社内で教育している」というのがほどんとで、社外でのOFFーJTを活用しているのは少数派である。ヒトを大切にするという割に、教育にはカネをかけていないのである。国内の社会人教育のインフラが脆弱であることもその要因ではあるが、専門教育を受ける場は、実は探せはかなり存在している。
そして、ヒトを育成するための仕組みづくりへの投資も重要だ。その仕組みとは人事制度、特に評価制度である。中小企業では多くの場合、評価を賞与の査定のために行い、人材育成につなげることができていない。
withコロナからafterコロナまでを見すえ、ヒトへの教育、その仕組みづくりへの投資が次の成長へのカギになると思う。