先月公募された「事業再構築補助金」の1次公募が明日で締切になる。補助金額の大きさから、当初はかなり話題になったこの補助金だが、3月17日に公表された「指針」が予想以上にハードルが高かったこともあり、公募開始の頃には世間の熱気がずいぶん冷めていたように感じた。しかしながら、以前から事業の構想を練り、指針の要件をクリアしながら事業計画をまとめ上げた事業者も存在している。
計画策定の支援に関わった実体験を踏まえ、事業計画書作成の要点をまとめてみた。
■「再構築指針」をどう捉えるか
指針では5つの類型が提示されているが、いずれも求めているのは「事業の多角化」だ。これは、経営戦略論の「アンゾフの成長ベクトル」において最もハイリスクとされており、思いつきでホイホイ始めてみるというレベルのものではない。
そもそも「事業再構築補助金」の趣旨は、「コロナ禍での経営戦略転換の支援」であり、自社の経営状況の入念な把握・分析を前提にしている。経営戦略の検討~立案は「自らを知り、周りを知る」ことが前提であり、このプロセスがなければ、事業再構築の構想を描くことはできない。いきなり「製品と市場の新規性要件をどうクリアするか?」から考え出すと、たぶん手詰まりになるだろう。
■経営環境分析は必須!
実はこの補助金の公募要領は、ずいぶん親切に書かれていると言える。というのは、「現在の事業の状況、強み・弱み、機会・脅威、事業環境・・・(中略)・・・について具体的に記載してください」と実際に書かれているのである。強み・弱み、機会・脅威を記載するということは、すなわち「SWOT分析をしなさい!」ということである。上述した経営状況の分析内容・結果を事業計画書に簡潔にまとめて記述すればOKなのである。
■「環境分析⇒戦略策定⇔新規性要件」という流れ
SWOT分析は戦略を検討する際のツールにすぎず、戦略そのものを導き出してくれるわけではない。事業機会に対して自社の強み(得意技や独自の経営資源など)を有効活用できる新たな事業分野を見出さなければならない。
それからその新規事業分野が、製品・市場の新規性要件をクリアできるかどうかを十分に検討しなければならないが、むしろ、製品・市場の新規性要件をクリアできるように新規事業分野の具体的な中身を組み立てていくという発想も必要かもしれない。
この場面では、支援機関(金融機関や商工団体など)や中小企業診断士を含むコンサルタントに助言や提案を求めることも有用だ。それゆえ「認定経営革新等支援機関等の関与」が申請の要件とされている。
■「ものづくり補助金」のストーリーとの共通点
導入する設備等の必要性の訴求、補助事業の方法、事業化に関わる将来展望、収益計画などは、「ものづくり補助金」の事業計画書でも求められる内容とほぼ同じと考えて良い。補助金の趣旨は異なっても、補助事業として取り組むべきことは変わらないのだ。「ものづくり補助金」の事業計画策定に関わった経験はかなり役に立つと思われる。
■準備期間は最低1ヶ月以上
「ものづくり補助金」の事業計画書作成とは異なり、経営環境分析から全社レベルの戦略策定までが必要な「事業再構築補助金」の事業計画書作成の準備には、最低でも1ヶ月は要するというのが実感である。2次公募の期間が5月10日頃~7月上旬とのことであるが、連休明け早々に着手するのがおススメだ。