新型コロナウイルスの感染拡大は、当初予想されていた中の「悪い方のシナリオ」で進行し、第5波の先行きは不透明なままである。感染対策の切り札とされていたワクチン接種も、問題が断続的に表面化しており、さらに新たな変異株の脅威もある中では、前途多難というのが個人的な見解だ。
そんな中で、コロナ禍で窮境に陥る中小・小規模事業者は着実に増加しており、コロナ収束まで事業を継続させる財務的余力をいかに確保するかが課題になっている。

■コロナ倒産の現状
帝国データバンクが公表している「新型コロナウイルス関連倒産」調査資料によれば、昨日8月末までのコロナ倒産は1963件である(参考→https://www.tdb.co.jp/tosan/covid19/index.html)。このうち1 億円未満の小規模倒産が1141 件(全体の58.1%)で、負債100億円以上の大型倒産は5件(同0.3%)にとどまっている。また業種では、コロナ禍で特に悪影響を受けている「飲食店」(328 件)、「ホテル・旅館」(108 件)、「食品卸」(100件)が上位を占めている。さらに、コロナ関連とともにいわゆるウッドショックの影響が顕在化している「建設・工事業」(200 件)も上位に入っている。
倒産件数自体がコロナ禍での窮境をどの程度反映しているかの判断は難しいが、倒産ではなく廃業に至っている事業者も相当数あると推察でき、実態としては氷山の一角と捉えるのが適切だろう。
また、すでにコロナ倒産した事業者の多くは、実際にはコロナ前から事業状況に問題を抱えていたケースが多かったと考えられ、コロナ禍の長期化で倒産件数が今後急増することが懸念される。

■業績悪化の真因は?
連携している金融機関と情報交換する中で、コロナ禍でも事業を継続できているものの、経営改善の糸口を見出せない事業者はかなり多いという印象を持っている。コロナ前の平時を前提にしたビジネスモデル(顧客×商品×販売方法)は当然ながら、コロナ禍を前提とした顧客の再設定、商品構成の見直し・改編、リモート販売の導入などを検討しなければならない。しかしながら、業績悪化の原因が、本当にコロナだけなのかどうかは十分に分析・検証しなければならない。もちろん業種にもよるのだが、コロナ禍でも業績が比較的堅調なのは、コロナ前も業績が好調だった事業者がほとんどである。これを逆説的に考えれば、現在の窮境の真因は、実はコロナ前から存在していた問題だったという可能性はかなりある。

■「コロナ前」と「コロナ禍」をていねいに分けて考える
業績低迷に際しては、ビジネスモデルの見直しと再構築をともなう経営改善が必要になる場面があるが、今必要なのは「コロナ前」と「コロナ禍」の視点から経営状況やビジネスモデルをていねいに分析し、業績悪化の真因を深堀りすることである。
「ピンチをチャンスに変える」は言うは易し行うは難しだが、「コロナ前」と「コロナ禍」をていねいにひも解くことが、コロナ後に向けた経営体質の強化に寄与すると思う。