当初予想されていたコロナ感染者増加が思いのほか深刻にならず、ウィズコロナにおける「出口」の模索が始まっている。マスク着用の緩和、水際対策としての外国人入国制限の緩和など、ブレーキ一に傾斜しがちだったコロナ対策も、現状を考慮した妥当な落し所を探る状況になったのは共感できる。そうなると、いよいよコロナを企業活動停滞の言い訳にすることはできなくなる。コロナ禍で後回しにされていた経営課題への対応が待ったなしだ。
■ヒトに関わる課題はコロナに関わらず不変
コロナ禍で大きく変わったことの1つが働き方である。就業者のほとんどが職場に通勤して仕事をしていたコロナ前の形態は変化し、リモートワークがずいぶん浸透した。また出張の代わりにZoomを活用したリモートミーティングも定着し、私自身もリアル面談とZoom面談を併用するようになった。たぶんコロナがなければ、Zoomがこれほど活用されることはなかっただろうし、少なくともその普及が5年は早まっただろう。
ウィズコロナの「出口」として、コロナ前同様に職場での勤務を再開する動きも出ている。一時はリモートワークによるコミュニケーション不足や帰属意識低下等による離職者の増加が危惧されたが、今後は通勤再開に抵抗する社員の離職が増加するのでは・・・と言われている。いずれの場合も、真っ先に会社を去るのは優秀な人材と相場が決まっている。実力がある人材は「次」も比較的簡易に決まることが多いからだ。
社員と会社の関係は、コロナ前、さらに遡ればバブル崩壊後の1990年代から変化している。終身雇用は制度上継続されているが、就職氷河期の真っ只中を歩んできた40代やそれよりも若い世代が就業者の多数を占める中で、それも形骸化している。終身雇用制は実のところ、「社員を守る」ではなく「社員を離れさせない」という会社本位の制度であり、時には「飼い殺し」にもつながり得る。今や新卒入社した会社に定年まで勤続したいと考えているのは少数派だろう。「社員は簡単に辞めないはず」と考えている経営者は危機感が足りないと自覚した方が良い。
■ではどうすれば辞められないか?
「『やる気がない社員』が71%」が意味するもの」というブログ記事を以前書いたことがあるが、「やる気がない」大きな要因の1つに会社と社員との信頼関係の崩壊がある。ダイバーシティーにおいて、価値観は当然多様化するわけで、会社(経営者)は多様な社員一人ひとりに向き合う必要性はますます高まっているはずだが、いったいどこまでできているのだろうか。
社員の仕事に対する意欲を引き出す人事評価制度の導入は急務だと言える。さらには企業ビジョンを明示し、会社の将来像と社員の将来像とのすり合わせも進めなければならない。このすり合わせは手間がかかるが、今後中間管理職にとって最重要の仕事になるはずだ。仕事の進捗や業績の集計などの管理業務は、いずれAIに取って代わられることがわかっているわけで、中間管理職にはコーチングやファシリテーションなどの対人スキルを高めるための継続的な訓練が必須になるだろう。