現代に生きる「経営の神様」と言っても過言ではない稲盛和夫さんがお亡くなりになった。私はその信者というほどではなかったが、恩師から紹介された書籍は何度か読み返し、多くの学びを得ることができた。診断士の実務においても、経営セミナーの資料に書籍の記述の一部を引用させていただいたことがある。
多くのビジネスパーソンから尊敬を集めた偉人がこの世を去るのは、混迷しているこの国にとって大きな損失だと思う。
■マインドは大事、そして数字も大事
稲盛さんの死去に接し、その著書「心を高める、経営を伸ばす」を書棚から取り出し、パラパラと読み直してみた。京セラの「フィロソフィー」に象徴させるように、哲学・マインドをとても大切にしていた経営者だったことは間違いないが、それとともに数字に関する厳しさを持つ経営者でもあったと思う。
書籍には蛍光ペンで線を引いてある箇所が多々あったのだが、見ていた中で一番目に留まったのが以下の記述だ。
損益計算書は経営者の毎日の生き様が累積した結果だ。
日々の事業活動の中で収益と費用が発生し、時間の経過とともに累積するが、それを月あるいは年で区切ったものが損益計算書という決算書で表示される。その数字の累積を「生き様の累積」と表現しているのが稲盛さんらしいと感じる。マインドという精神性と数字への厳しさという合理性は、経営の「両輪」だと理解すべきだろう。
■神様が遺した言葉はかなり普遍的
経営者だけでなく、多くのビジネスパーソンや学生にも前掲書はぜひおススメしたいのだが、文章は平易で、誰にとってもわかりやすく書かれている。そして、「言われてもれば、当たり前のこと」ばかりが記されている。海外でも翻訳させ、中国でもかなり知名度が高かったとのことだが、時間や地域を問わないその普遍性は、これからも色あせることはないだろう。
私もまた改めて学びを深めたいと思う。