数年前から盛んに取り上げられる「働き方改革」に対して、「働きがい改革」は置き去りにされているというのが個人的な所感だ。「働きがい」は人それぞれであるが、「自らの仕事に対してやりがいや誇りを持ちながら主体的に取り組めること」と考えて良いだろう。
■問題は何で、なぜ生じているのか?
前回も取り上げた「『やる気がない社員』が71%」という調査結果には、多くの会社・職場には働きがいが少ない、あるいはないということが示唆されている。なぜ働きがいが少ないのだろうか?
この問題を考える切り口として、定説とも言えるモチベーション理論であるハーズバーグの「二要因理論」が有用だと考える。この理論は、米国の心理学者であるF・ハーズバーグ氏が調査研究を起点して提唱したものだが、一部には異論や批判があるものの、理論としてはかなり合理的である。人事労務管理に必要な要素を「動機付け要因」と「衛生要因」の2つに分けて考えるのであるが、動機付け要因は仕事の満足度に関わるもので、「多いほど仕事に対して前向きになる」要素である。これに対して、衛生要因は仕事の不満に関わるもので「不足していると不満を感じる」ものであり、かつ「あるからと言って必ずしも満足にはつながらない」要素である。
たとえば、給与水準は低いよりも高い方が良いに決まっているが、それだけで本当に満足するかと言えば、そうではないだろう。おカネのためだけの仕事に働きがいを感じる人はどれだけいるのだろうか?仕事の内容に満足しつつ、それに見合った給与がもらえることで、働いていることへの満足感や幸福感を抱くはずだ。
■「働きがい」は取り戻せるか?
これまでの働き方改革を振り返ると、衛生要因に関わることがほとんどだ。確かに不満は解消されつつあるかもしれないが、満足度は高まったのか疑問だ。有休の強制取得などは、職場の歪みを生むことで不満足を高めるという逆効果を招く危険性もある。経営者にとっての自己満足であってはいけない。
そうならないためには、働く「人」に対してよりいっそう関心を持つべきだろう。会社組織において、人事評価はかなり重要な機能を果たしているはずだが、給与査定(=衛生要因)のためだけの評価では不十分なのだ。本来あるべき人事評価においては、従業員と十分なコミュニケーションをとりながら、働きがいを促すための承認(肯定的な評価)、責任(とそれに見合う権限)の付与、成長につながる育成指導が求められる。
やるべきことはしっかりやれば、「働きがい」を感じなら働ける環境は実現できると確信している。