新型コロナウイルスの感染拡大にともなう社会・経済の混乱からちょうど3年が経過した。思い起こせば、3年前の4月上旬は、緊急事態宣言が発令されるかどうかという状況で、「ステイホーム」が叫ばれ、また「アベノマスク」が物議を醸し出していた時期だった。3年の間にはコロナ感染拡大の「波」が断続的に発生した。今もコロナは収束したわけではないものの、今になってみると、世の中はウィズコロナを所与の環境としてそれなりにうまく適応してきたと個人的には感じている。そして、感染症法上の扱いもようやく見直され、ゴールデンウイーク明けの来月8日からは、「5類感染症」に位置づけられる。またマスクの着用も先月中旬から緩和されており、ウィズコロナは「脱コロナ」という新たな段階に移行している。
■「コロナ前」に戻るもの・戻らないもの
コロナ禍で大きなダメージを受けてきた飲食店・商店や観光地も、脱コロナの中で来客数がずいぶん回復しているという印象だ。企業業績もマダラ模様ではあるものの回復する兆候があり、商業・サービス業でもコロナ前の売上水準まで戻る事業者がある程度出てくると予想している。
その一方で、コロナ前に戻らないものもある。まずはヒトだ。飲食・宿泊等のサービス業ではすでにコロナ前からヒト不足が顕在化していたが、コロナ禍での利用客減少でその問題が一時的に表面化しにくい状況であった。しかしながら、昨年秋開始された「全国旅行支援」による旅行需要の回復に際しても、コロナ禍でダウンサイジングしたヒトを補充できず、予約受入れに大きな制約が生じている。コロナ前以上に深刻化するヒト不足の中でも成り立つIT・ロボット等を組み込んだオペレーションの構築が、サービス業での重要かつ喫緊の課題である。
もう一つがカネだ。コロナ禍での資金繰り対策で「ゼロゼロ融資」による借入を行った事業者はかなり多い。この増加した借入金返済の負担が相当重い。売上がコロナ前の水準まで回復し、借入金残高がコロナ前の水準であれば問題ないが、借入金残高はコロナ前よりも増加している。毎月の元金返済額はコロナ前よりも増えるわけで、確実に資金繰りを圧迫する。金融機関との協議の中で、返済条件の見直し・変更をせざるを得ない場面が多くなると予想される。
■本業の再強化が必要不可欠
事業再構築補助金を活用して新規事業への進出を図っている事業者も多いが、私の実感では当初の計画通り順調に事業を展開できているのは少数派ではないか。補助金による財務的な負担の軽減はあるものの、新規事業を軌道に乗せるのは容易なことではない。脱コロナの中で、本業の磨き上げ・レベルアップによる付加価値向上、さらには価格引き上げがより重要であり、収益力強化は、結果的に処遇改善によるヒト不足への対応、利益率向上によるカネ繰りの改善に直結する。コロナ前と同様に地道な本業強化による経営改善を進めることが、遠回りなようで一番の近道だと思う。