久々のブログ更新です。
9月下旬まで夏のような天候が続いたものの、1か月もたっていない10月下旬のいまは例年通りの陽気となり、あづみ野は先日初霜が降りた。
さてそんな中ではあるが、10月から最低賃金が引き上げられ、全国平均の時給は前年度の961円から1,002円に上昇している。都道府県ごとのバラツキはあるが、ついに平均時給が1,000円突破の段階に入っている。
■政策でどこまで賃上げできるのか?
政府は「分配戦略」における「所得の向上につながる『賃上げ』」の施策をとして、公的価格の見直し、賃上げを行う企業への支援、下請取引の適正化、最低賃金の引上げに取り組むとしている。このうち最低賃金の引上げは、上記の通り実施されている。また、賃上げを行う企業への支援は、中小企業診断士の業務とも関連があり内容を概ね把握しているが、賃上げを要件とする補助制度では誓約書の提出を求められ、実行されない場合には補助金の返還請求に至る場合もある。
看護・介護・保育・幼児教育などの分野の賃金は公定であるため、政府主導の賃上げと言える。その一方で、通常の民間企業での賃金支払いについては、その主体はあくまでも企業自身であり、政府(さらには政治家)が賃上げを叫んでも、実効性が担保されることはない。「中小企業向け賃上げ税制」についても、中小事業者の過半は赤字のために法人税(個人の場合は所得税)を納付していない実態を考えれば、税額控除率を引き上げても効果は限定的と思われる。政策はあくまでも政策である。
■賃上げはもはや「戦略」
とは言え、物価高も考慮しながら賃上げは実施されており、私が関与している企業でも今年の給与改定に合わせてベースアップが実施されている。賃上げの目的は、物価高に対する従業員の不安緩和、さらにはモチベーションの維持、人材流失の抑止などであり、経営者の政策的な判断が反映されている。
日本国内の人口動態を考慮すれば、労働市場は今後恒常的に「売り手市場」になることは確実であり、どうやって人材を確保するかが企業存続にとって最重要課題となっている。「良い人材をいかに安く雇うか」という古い発想は通用せず、賃上げの原資を確保できない低収益企業は、人材の流出を招き、今後確実に淘汰されるだろう。
賃上げは、従業員のためのものであり、さらには企業存続を図る経営者のためのものでもある。