先月19日の日経朝刊に「『ゾンビ企業』3割増」との記事が掲載されていた。
ゾンビ企業とは、数年にわたり借入の元金返済もさることながら金利の支払いもままならない状況で、実質的には経営破綻している企業を指す。本来破綻しているはずの企業が、政府や金融機関などの支援(というよりも実態としては援助)によって延命している状態である。日経の記事によれば、2022年度で約25万者存在すると推計されている。これは日本国内の企業数 368 万者(2021年6月時点・総務省統計局)の約7%に相当する。いわゆる「ゼロゼロ融資」は、慢性的な資金不足を緩和し金利支払い負担も軽減したことで、結果的にゾンビ企業の延命を促している。
■支援と援助支援と援助という語を使用したが、この2つは似て非なるものである、支援とは「支え」であって部分的な手助けに過ぎません。他方、援助とは支えるのは一部ではなく全面的に助けることを意味する。つまり、経営の主体性のあり方がまったく異なる。
誰もが未経験のコロナ禍において経営状況が厳しなくなった多くの中小企業には、ゼロゼロ融資が有効だったことは間違えない。問題は、主体性をもって厳しい経営状況に向き合い地道な経営改善を続けているかどうかだ。経営改善を支援する役割を担っている中小企業診断士は、主体的で前向きな企業をしっかり支えていかなければならない。
■企業の自然淘汰は必要
人口減少時代が到来する中で国内の市場が縮小することは致し方なく、それにともない一定数の企業が市場から淘汰されるのはある意味で必然と言える。市場が縮小するにも関わらず、企業数が適正水準まで減少しないことは、過当競争を助長し、企業の適正な利益確保を阻害する遠因ともなる。コスト上昇分を価格に転嫁できない問題も、企業の自然淘汰を抑制してきた政策のマイナス効果と言える。援助の色彩が強い政策は、健全な市場をゆがめている。
■金融庁の的確な政策転換
脱コロナにおいて経済活動がほぼ正常化した中で、金融庁は金融機関に向けて、企業に対する支援の軸足を資金繰りから経営改善や事業再生に移すように明示している。
→ 「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を踏まえた経営改善・事業再生支援の徹底等について
要するに、資金繰りは大切、そして経営改善はさらに大切という趣旨である。適切なタイミングでの適切な政策転換であり、賛同したい。
持続的な賃上げは、ゾンビ企業の自然淘汰が進まず過当競争状態にある市場環境では容易に実現できない。
金利は払えない、給料も上げられない企業には市場から早々に退出してもらう方が良いというのが個人的な見解だ。ゾンビ企業に抱え込まれていた人材が解き放たれても、人手不足が恒常化している今ならば比較的円滑に吸収される環境にある。「雇用を守る」はもはやゾンビ企業を延命させる大義にはならない。廃業、さらにはより前向きな「配業」も見すえることも必要だ。いったん仕切り直しをする「配業」も立派な戦略である。
バブル崩壊の後遺症を引きずる「失われた30年」から脱するには、ゾンビ企業の自然淘汰が端緒になると思う。