7年ほど前のことだが、このブログで「AI時代の診断士」というコラムを書いたことがある。当時、「ヒトの仕事の多くがAIに取って代わられるのでは?」という議論が盛んだったが、AI(人工知能)が普及・浸透している今日でも、同様の議論はある。ただ、コロナ禍を経てヒト不足の深刻化が顕著になる中で、ヒトが足りない部分をAIに補ってもらうという考え方が定着しつつあると感じる。ヒトとAIの協業という発想は大切にしたい。

そんな中で、AIの進化にともなうプラスの影響、マイナスの影響が顕在化している。プラスの1つは、ヒトの仕事を補完することによる生産性向上である。私自身もマイクロソフトBingに“相談”しながら仕事を進める場面があり、参考になるアウトプットを得られることがある。他方、マイナスの問題ではAIの悪用によるフェイクの氾濫がその1つだ。社会、政治に悪影響を及ぼす可能性が指摘されており、懸念される。

アナログとデジタルの対比イメージ

■デジタルは大事!?
コロナ禍において、人間どうしのコミュニケーション手段はリアルからリモート・バーチャルに比重移動した。地方在住であることの不利が緩和され、居住場所に左右されない柔軟な働き方も普及した。危機は革新を生み出す端緒になり得るが、情報技術の進化によってコロナ前後で世の中の景色はそれなりに変わった。
企業活動では、競争力強化や成長に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性、重要性が指摘されている。OMO(Online Merges with Offline)による顧客に対する価値提供の高度化や、IoT(Internet of Things)とAIとを組み合わた生産効率向上やエネルギー消費量削減など、DXにより成果は出ているようだ。事業の中に仕組みとして巧く組み込むことができれば、有用であることは間違いないと思う。
それでは、デジタルは良いことずくめなのだろうか?

■そもそもデジタルとは?
デジタルとは何? とBingに発問すると「数値や記号を用いて情報を表現する方式を指します。具体的には、0と1の2進数でデータを扱うことを指します」と回答した。
人間である私はデジタルを、定量的、模倣が容易(=コピペしやすい)と大ざっぱに解釈している。この2つの性質を有しているために、デジタル技術は短期間に広範かつ等加速度的に普及しやすい。たとえば、ChatGPTは2022年11月の公開からたった5日でユーザー数が世界で100万人を超えている。
そうすると、こんな解釈もできなくはない。

世の中に存在するありとあらゆるデータ(ビッグデータ)を収集してAIに学習させると、アウトプットのオリジナリティが希薄化するのではないか?

一般論だが、経営戦略(特にマーケティング)において重要なのは差別的優位性、模倣困難性とされている。デジタル偏重だと、将来的に模倣困難性が構築できず、差別的優位性を維持できなくなり同質化が進むのでは?・・・と思うのだが、どうだろうか?(後編に続く)